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歯科道具誌 JJDent Gadgets No.2 1996 (平成8年) 目次

日本歯科道具研究会 会長 あいさつ
特別講演 「歯科機械器具の歴史」
☆第6回道具大賞にて発表 ↓クリックで冒頭を表示します。
一般研究発表 1.診断支援プログラムの開発−とくに歯髄診断について−
   〃

2.サージカルテープのその後

   〃 3.エキスプロラーへの一考案
   〃   4.レジンの収縮を極力おさえた重合システム
   〃 5.キャップ式磁性アタッチメント
   〃 6.歯科検(健)診用照明具の試作
   〃 7.オルソパントモ等X線フィルムのスライド作製の工夫
   〃 8.ME機器のコード及びチューブの多目的固定器具の工夫
   〃 9.手指感覚を見直した新しいハンドピースの形状
   〃 10.簡単にタービンの回転数を計測するタービンチェッカーの開発
   〃 11.ノンタッチで薬液を供給する小型ディスペンサーの開発
   〃 12.骨盤傾斜測定器
   〃 13.ネジ式磁石を組み込んだ歯根挺出用アタッチメント
   〃 14.根管形成の原則の具体化と人間工学的条件からみた「SEC−0」
シンポジウム 「モデレーター」
ニューメディアによるインホームドコンセント
新しい機材を使った患者とのコミュニケーション診察室におけるニューメディアの活用
歯科診療におけるマルチメディアの利用とコンピューターユニット
  日本歯科道具研究会 理事会議事録
日本歯科道具研究会 会則
日本歯科道具研究会 会員名簿
日本歯科道具研究会誌 投稿規定
編集後記

*一般論文(冒頭)*

診断支援プログラムの開発−とくに歯髄診断について−
日本大学歯学部保存学教室歯内療法学口座 池田仁崇 鴻丸稔 斎藤毅
はじめに
日々臨床においては、問診、視診、触診などの諸診査を行い臨時患部、患歯の特定および
その病名を下し処置に至っている。しかしながら、種々の病態において判断を下し診断する
、いわゆる意思決定は容易でないことが多い。そこで具体的臨床例を提示し、これに対して
種々の判断を要する分岐点をtree構造で表しその関連参考文献を列記したものが報告され
注目されている。
そこで演者らは、保存治療における歯髄診断について当教室で学生の臨床教育に用いてい
る症例報告用紙の診査様式に基づき診断支援用tree表を作成した。さらにこれをパソコン
用プログラムに置き換え実行ファイルを作成したので報告する。(続く)
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サージカルテープのその後
静岡県浜名郡開業 鳥居賢一、鳥居正雄
本当に、ひょんなことから始まった「サージカルテープ」を使った基準線のマーキングだった
。そのため、準備期間がほとんど無く、発表もぶっつけ本番のようなものであった。
日頃から、自分で不便を感じていることは多々ある。しかし、時間の無さを理由に、何もしない
ことが多い。今回も、あわやそうなりそうであったが、うるさ方に救われた。一応感謝している。
冗談はさておき、その後「マーキング」は、一歩ずつではあるが、進んでいる。まず、テープ
ディスペンサーの改良である。市販化を考えると、大量生産が安価にできることが第一である
が、現在のところは、試作のレベルであるが、ほぼ完成されたと見ている。次に、テープ自体
の問題であるが、これは、日東電工社の御協力により、最初から完成品を作製して頂いてい
るので、そのまま使用している。細過ぎず、太過ぎず、粘着力も程よい優秀なテープである。
(続く)
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エキスプロラーへの一考案
日本大学歯学部歯科補綴学教室 石上恵一、武田友孝
      局部床義歯学講座 高山和比呂、大木一三
臨床において、一般に歯内処置後、歯冠部の実質欠損が大きい場合、所定の支台形態にす
るため、キャストコアーによる支台築造により補足形成が行われる。そして、キャストコアー
を装着する際には、ポスト部にセメント泥をレンツロ又はスクリュードライバーなどにてホー
ル内へ送り込む。しかし、忙しい診療時間の中、これらの操作をエキスプロラーで代用する
機会が多く、その結果、根充材とキャストコアーの尖端部との間に空隙が生じることになる。
そこで、レンツロやスクリュードライバーなどの効果を期待する簡便な方法として診療の基本
トレーセットの中の一つ、エキスプロラーの尖端部付近にラセン状のねじりを入れ、レンツロ
やスクリュードライバーなどの効果を期待するものである。(続く)
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レジンの収縮を極力おさえた重合システム
東京都中央区開業 滝口弘毅
株式会社フェニックスデント 岡根谷哲次
はじめに
レジンは歯科診療に欠かせない材料の一つであるが重合時にかならず収縮するという宿命
をもっている。
この問題を解決するためにいろいろな装置や方法が発表されたが、装置が複雑であったり高
価であったり、ないしは重合に長時間をようしたりして実用化にはほど遠い状態である。
筆者らは比較的簡単な装置で、しかも短時間でレジンを重合し、収縮を極力おさえることがで
きるシステムを完成させたので発表する。
この論文では読者が理解しやすいようにレジンを使用する歯科補綴物の代表として総義歯を
選び総義歯の重合方法についてのべる。(続く)
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キャップ式磁性アタッチメント
千葉県柏市開業 田中譲治
はじめに
磁性アタッチメントは、原子レベルの磁気エネルギーを利用しているため、維持力の減衰がな
いことや、有害な側方力や回転力を逃すことなど、多くの有用性があげられ、現在、優れた維
持装置として認められている。しかし、術者の臨床操作の不手際によりマグネットが脱落したり
、マグネットとキーパーとの位置ずれを生じさせてしまうことがある。そ
こで、日立金属(株)の協力のもとで我々が開発している、キャップ式磁性アタッチメント(Magnetic
 Attachments of Cap−Shape:M.A.C.S)を紹介する。(続く)
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歯科検(健)診用照明具の試作
千葉県市川市開業 長谷川清
学校や保健所等で施行されている集団歯科検診を担当する際、より明るい場所、すなわち窓際
に位置どることが多い。そのような時、晴れた日よりも、すこし曇った日のほうが検診しやすい場
合が多い。このような経験をされた歯科医師も少なくないはずである。晴れた日は周りが明るく、
術者の目(瞳孔)が周囲の明るさに同調するため、陰になる口腔内との明暗の差が開き、かえっ
て検診しにくい結果となるものと推察できる。また、照明具が用意される場合もあるが、そのほと
んどが一般的の照明具で、顔面は照明されるが、肝心の口腔内は影になり、不都合な場合が多
い。
歯科検診用照明具は口腔内のみを照射することが肝要である。それなら、歯科医療用照明装置
を用いれば、簡単に解決できることは明白である。しかし、この照明装置が高額なため、なかなか
設置してもらえないのが現状である。だからといって、現状に甘んじるのも問題である。そこで、小
型・簡便・廉価を念頭に歯科検(健)診用照明具を試作した。(続く)
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オルソパントモ等X線フィルムのスライド作製の工夫
埼玉県秩父郡開業 葭田秀夫
はじめに
オルソパントモ・四つ切・CT等X線フィルム、MR画像は35mmスライドに縮小することにより症例
ごとに口腔内写真と一緒に保存できて便利である。
演者はオルソパントモフィルム(以下パントモ)等を簡便にスライド化する方法を考案し、10年前よ
り使用し改良を加えてきたので発表する。(続く)
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ME機器のコード及びチューブの多目的固定器具の工夫
埼玉県浦和市開業 西村政仁
はじめに
ME機器には多くのコード類やチューブ類が装着されている。例えば電源コード類をはじめME機
器の重要な働きを司る部分となっている所の導線やチューブ類などが多種多様に活用されている。
この長い線状の部分の取扱いが正しく扱われないとさまざまな弊害が起こる。例えば機器の使用
時に、付属しているコードやチューブが絡んだ、ねじ曲がったりする。また使用しない時、無造作に
垂れ下がっていたり、折れ曲がったりしているのをしばしば見る。また、よく紐や針金などで縛って
いるのをみるが、これもコード、チューブを痛めるおそれがあると同時に円滑に使用しにくい等の問
題点が上げられる。医療機器のコードやチューブ類の多くは構造的に繊細で高価なものが多い。
これらの問題を解決するために、つぎの様な器具を考案した。(続く)
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手指感覚を見直した新しいハンドピースの形状
大阪大学歯学部歯科補綴学第二講座 大谷隆之
はじめに
ハンドピースは歯科において、最も正確滑精密な操作を要求される器具の一つである。歯の形成に於
いて、0.1mm以下の精度や、僅か1−2度の角度の調整を要求される場面も少なくない。
図1は、ハンドピースを使用して形成する時の術者の感覚の情報源を示しているが、視覚だけでなく、
手指の感覚情報が重要なウェイトを占めていると考える。従来から、切削中のバーの角度の設定は、
主にハンドピースの切削用バー及びヘッド部分を目視して判断しているが、臨床では、その目視も十
分にできない場合も多く、術者にとって手指感覚は重要な情報源となってくる。
そこで、この手指感覚をより有効に活用できるように、ハンドピースの把持部に切削用バーと平行な
平面を付与したハンドピースを試作した。術者は、このハンドピースを把持すると同時に、手指の感
覚からも切削用バーの傾斜角度を判断できるようになり、より正確な形成が可能になると考えている。
今回、このハンドピースの把持部の形態の相違による、切削用バーの設定角度および形成の精度に
ついて比較検討したので報告する。(続く)
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10 簡単にタービンの回転数を計測するタービンチェッカーの開発
昭和大学歯学部歯科理工学教室 下山忠明、清水友、倉本佳明、宮崎隆、
日本精機株式会社商品開発部 東正利、馬場紀明、渡辺芳樹、白井俊也
はじめに
エアータービンは高圧空気によって回転力を得るため、回転時に撒き散らす粉塵汚染や停止時に起
こるサックバックによるタービン内部汚染が大きな問題になっている。そのため二次感染を引き起こ
さないようオートクレーブ等でタービンに滅菌を施す歯科医が増えており、タービンメーカーでも高圧
蒸気滅菌に耐えるよう種々の改良を施してきているが、まだまだ充分とは言えず、歯科医にとっては
タービンを多数買い集めた際のイニシャルコストのみならず維持管理にかかるランニングコストもか
なりの経営負担になっている。また、このような経費の増加を嫌って、タービンに充分な滅菌を施さず
、簡易消毒にて済ましている歯科医がまだ多いのもやむを得ないものと思われる。このような問題解
決の一助として簡便にタービン回転数を計測するタービンチェッカーの開発を試みた。(続く)
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11 ノンタッチで薬液を供給する小型ディスペンサーの開発
昭和大学歯学部歯科理工学教室 佐々木信行、清水友、玄裕三、宮崎隆
日本精機株式会社商品開発部 渡辺芳樹、東正利
はじめに
歯科のユニットの改良にはここ数年、目を見張るものがある。特に感染防止対策に工夫を凝らしたも
のが、数多く見受けられるようになってきた。その中で昔から種々の問題点を指摘されながら、ブラケ
ットテーブルの上で取り残しを食っているのが、薬瓶ではなかろうか。通常、使用時に蓋を取って綿球
や綿栓に薬液を浸漬させ患部や患歯に貼薬するわけであるが、繰り返し使用するため薬液の汚染や
変質を招く原因になっている。また、蓋を開ける際、蓋の汚染も問題であるが、手に薬品が付着したり
して思わぬ事故を招いたりする危険もある。最近は診療側はグローブを装着していることが多く、薬品
の付着を認識しづらくなっていることも問題である。また幾つかの工夫の凝らされた薬瓶(ワンタッチで
蓋を開けたり、必要なだけ滴下する等)も最近登場してきているが、根本的な改良には至っていない。
そこで今回完全無接触で適量を綿栓に滴下する薬剤ディスペンサーを開発した。(続く)
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12 骨盤傾斜測定器
名古屋市熱田区開業 藤井佳朗
はじめに
歯科医療とくに咬合と全身との深い関連性が明らかとなり、全身姿勢との関連も注目されている。
著者も、重力線に対する全身姿勢を観察する道具として、紐の先におもりを付けるだけの単純な装置
を藤井式姿勢チェッカーとして報告してきたが、本装置のみでは水平的な姿勢観察が不十分である。
そこで、骨盤の傾斜を比較的容易に観察できる装置を考案したので報告する。(続く)
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13 ネジ式磁石を組み込んだ歯根挺出用アタッチメント
名古屋市名東区開業 須賀康夫
従来から歯肉縁下または歯槽骨縁下(歯槽骨頂下)にある歯根、即ち、残根状態になっている歯根
は骨植がよいものでも、一般的には抜歯の対象となってきた。
しかし、人間の平均寿命が近年延長され、歯の重要性がますます見直されてきた現在、歯科医師の
手によって所謂、残根状態になった歯牙を次々と抜歯してしまえば、最近国民の間でも口にされるよ
うになった『8020』も絵に書いた餅になってしまう。
ただ一部の歯科医師によって残根状態になっている歯根を簡単な装置で歯槽骨から2〜3mm引張
り出して、それに支台築造を施し、再び自分の歯として利用する方法、即ち、歯根挺出法(Extrusion)
がおこなわれている。
その歯根挺出法には、主にバーと矯正用のエラスティックを用いて目的の歯根を牽引することが多い。
しかし、この方法はコントロールが難しいことと、審美的に問題がある。
そこで、今度、これらの問題を解決するために暫間補綴物に組込む、ネジ式磁石による歯根挺出法ア
タッチメントを試作し、これを実際の症例に使用したが想像以上の結果が与えられた。(続く)
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14 根管形成の原則の具体化と人間工学的条件からみた「SEC−0」
東京都台東区開業 東海林芳郎
はじめに
根管治療を効率よく進めるためには、患者と術者と器材との間の調和が必要である。
患者の条件として、根管の形態的特徴、歯牙の部位と口腔内での空間的位置などがあり、術者の条
件として、患者の口腔に対する治療位置と利き手の器具の握り方、術者が根管形成に対してもつパ
フォーマンスイメージとアプローチの仕方などがあり、そして患者の根管と術者の手指を連係する器
材のよしあしがある。
根管形成は、根管充隙の前準備として、根管治療の中で最もドラマティックな過程であり、根管治療
の成否はここで決まるともいえる。
根管形成を手指の動きは、リーミングとファイリングでは異なり、根管形成の原則の観点からファイリ
ングを器械的に具現化した「SEC1−0」を開発・改良したので、人間工学的な条件と併せて報告す
る。(続く)
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