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歯科道具誌 JJDent Gadgets No.3 1997 (平成9年) 目次

日本歯科道具学会会長あいさつ
内山教授の退官記念講演を拝聴して
  ISOと歯科の道具
歯科人間工学とは(人と用具のチームワーク)
☆第7回道具大賞にて発表 ↓クリックで冒頭を表示します。
一般研究発表 1.改良型団体レーザーによる市販修復材料の重合
   〃

2.歯周ポケット測定並びに探針用

   〃 3.熱源の異なるヒートキャリアーがガッタパーチャ温度に与える影響
   〃   4.インプラント位置設定X線標識の設計と応用
   〃 5.ポスト窩洞乾燥の工夫
   〃 6.形状記憶合金を用いた新しい支台築造法
   〃 7.歯科治療台兼用車椅子
   〃 8.診療室で使用して便利な保冷庫
   〃 9.省力化を高め安全性も追及したリムーバーの開発
   〃 10.ワックスペンWAX MASTER DP300
   〃 11.インフォードコンセントを重視した画像管理ソフトの開発
シンポジウム
  日本歯科道具学会理事会議事録
日本歯科道具学会会則
日本歯科道具学会誌投稿規定
編集後記

*一般論文(冒頭)*

改良型団体レーザーによる市販修復材料の重合−光ファイバー先端形状による硬化状態の変化−
昭和大学歯学部第二保存学教室 成澤英明 久光久
[緒言]
今世紀に発明されたレーザーは、単波長の位相の整った光を発生することができるため、理想的な光
源として注目されており、歯科応用も多数試みられている。
レーザーによって光重合型のコンポジットレジンを硬化させる試みは主にアルゴンイオンレーザーによ
って行われてきており、優れた重合性能が得られることが報告されているが、このレーザーは、高真空
のレーザー管に高電圧をかけて発振させるためエネルギー効率が悪いという本質的な欠点がある。こ
のため実用的には、
1.装置が大型
2.電力消費が大きい
3.強力な冷却が必要
4.高真空でアルゴンガスが封入されているレーザー管の定期交換が必要。
という欠点を克服することが歯科臨床に普及するための条件となる。あるいは、レーザー光を発生させ
る原理が異なるレーザー装置が望まれる。
半導体レーザは、すでにコンパクトディスクや光通信のために実用化され、我々の生活に深く入り込ん
でいる。電磁波のエネルギーは振動数に比例するため、レーザー発振はエネルギーが大きくなる短波
長のほうが技術的に困難であり、これらの実用域の半導体レーザーは赤外線である。
最近DVDという新しい記憶装置が発売されたが、これには赤色の半導体レーザーが使われている。波
長の短い青色の半導体レーザーが実用化されればさらに記録密度があがり高性能化が見込めること、
すでに実用段階が近い緑色のレーザーと合わせて光の3原色のすべてが半導体レーザーで発生でき
ることから、応用範囲の飛躍的拡大が予想されるため、オプトエレクトロニクス業界では熾烈な開発競
争が行われている。この4月の応用物理学会ではすでに実験室内での数時間の発振が報告されている
ため、数年内には実用域には達すると思われる。一方で、島津製作所が開発した完全固体ブルーレー
ザーは、赤外線半導体レーザーを光源にNd−YAG結晶を励起して946nmのレーザー光線を取り出し
、この光を倍波変調することによって、473nmというコンポジットレジン重合に至適な波長を発生する。
出力はアルゴンイオンレーザーには及ばないが、40Wに達し光重合レジンの効果には十分な出力であ
ることが確認された。この試作レーザーのコストは100万円を超えるため、すぐに市販できるわけでは
ないが、半導体レーザーあるいはこの完全固体レーザーが歯科応用可能なコストになるのは時間の問
題であり、光重合レジンの光源として検討を開始する意義があると考えられる。レーザーの特徴は光ファ
イバーで効率よく伝達できることから、光ファイバーを使用して光重合型レジンを硬化させる場合の利点
を検討した。(続く)
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歯周ポケット測定並びに探針用  光ファイバー(OPT.P )PROBEについて
京都市開業 竹内秀行
1)はじめに
◆歯周疾患
近年WHOにおいても2000年までに歯周疾患の有病率・有病者率(CPITN)をだし地域その他グルー
プによる撲滅運動を展開している。
一方我が国においても、厚生省は歯周疾患と骨粗鬆症・更年期障害と共に国民三大疾病に指定して、
快適な壮年期を送れるよう、職域検診・節目検診・学校検診等に歯周疾患の項目が付加され、治療重
点目標とされている。
又、日歯においては8020運動の一環として歯周病の検診を強力に推進し歯周疾患の治療に重点をお
いている。又、臨床の現場においても、P疾患の処置は日常欠くことの出来ない治療行為になってきた
。(続く)
▲Top
熱源の異なるヒートキャリアーがガッタパーチャ温度に与える影響
日本大学歯学部保存学教室歯内療法学講座 勝呂尚、小島弘光、末田敏雄、佐藤文彦、
明石俊和、目澤修二、斎藤毅
【緒言】
根管充填は、根管治療の最終治療操作であり、その目的は根管を閉鎖することによって、歯周組織に
根管経由の刺激が及ばないようにする事である。このため、従来から種々の根管充填材が使用され、
また、様々な根管充填法が考案されてきた。
根管充填法のうち、加熱による方法は、緊密な根管封鎖を行うという目的から有利であると報告されて
おり、Schilderによって火焔加熱型ヒートキャリアーを利用したWarm Gatts percha法が報告され
て以来、この方法は加熱根管充填法の基本手技として普及している。しかし、この方法はヒートキャリ
アーを火焔上で加熱する方法を採るのでヒートキャリアーの形態的な性質として先端での蓄熱が十分
ではなく、ガッタパーチャの加熱に不十分なことが指摘されており、このためヒーター内蔵型あるいは
高周波加熱型のヒートキャリアーが提案され関心が持たれている。
そこで我々は、従来から使用されている火焔加熱型に加えて、ヒーター内蔵型2種および高周波加熱
型の合計4種のヒートキャリアーについて、それぞれの先端から1mmおよび5mmの温度変化を測定
し、さらにこれを根管に挿入した場合のガッタパーチャ温度変化を明らかにしたので、臨床への情報と
して提供する。(続く)
▲Top
インプラント位置設定X線標識の設計と応用
日本歯科道具学会、ICOI、日本口腔インプラント学会 東海林芳郎
1.目的
インプラントの診断から治療までの過程の中で、歯列欠損部の顎骨内にインプラントを挿入するために
、対合歯との好ましい位置的関係を三次元的に確定することが重要です。パノラマX線写真は顎骨と歯
牙の二次元的全体像を得る一般的な手段ですが、画像が前後左右で寸法比率に差を生じる欠点があ
ります。そのためにパノラマX線写真での寸法への信頼性が問題となり、診断の支障となります。
今回、顎骨垂直径と歯牙および上顎洞や下顎管ー頤孔などの解剖学的条件を寸法的に把握し、イン
プラントの画像診断の精度を臨床的に高める一方法として、X線撮影時のインプラント位置設定X線標
識を試作しました。(続く)
▲Top
ポスト窩洞乾燥の工夫
葭田歯科医院 葭田秀夫
Tはじめに
ポストコアー等の合着や接着(以下接着)をする際に、窩洞を良く乾燥することは脱離を防ぐために重要
なことである。
根管内窩洞は象牙細管の切り口が露出している、その上窩洞形成で根充材をカットした窩底も完全に
滑沢ではない。これら根管壁・窩底を完全に乾燥することは不可能に近いことだと考える。
ある種の接着剤には説明書に多少の水分は可とあるが、マクロの「濡れた状態」はミクロの世界では洪
水に近い状態である。我々がベストを尽くした状態がミクロで「多少の水分」の状態だと考える。著者は
4番のピーソーリーマーで約10mmのポスト窩洞を形成するが、この深さ・太さの窩洞の場合は通常の
エアーシリンジで空気による乾燥を行っても最深部までエアーは届かない。根管内バキュームによる最
深部での吸引が有効である。
エアーの吹きつけや吸引のみでは粗造な面についている水分は完全に除去されない。ペーパーポイン
ト等で接触して水分を吸い取る必要がある。
「可及的乾燥」では不十分である、乾燥して乾燥状態を確認したのちに接着しないと、数年後に補綴物
がポストごと脱離、のペナルティを受ける。
乾燥は確認しながら行わないと時間や労力の無駄となるので、同時に行える工夫をして良好な結果を
得ているので報告する。(続く)
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形状記憶合金を用いた新しい支台築造法−ヒートロック ポストコアー−
大阪市開業 今井元次
はじめに
日常の歯科診療において、歯科修復物の脱落は頻度が高く、とくに歯牙疾患を主訴とした、新来患者
の内、脱落が全体の26%を占めている(1995年 別冊 クインテッセンス YEARBOOK 安田登 
論文「超接着による齲蝕治療」による)。
患者が歯科治療に対する不信感を持つ原因の一つに、補綴物の脱離、脱落がある。また、補綴物再
治療の主な原因にも、脱離、脱落が多いようである。
特に補綴物の脱落は、冠とコアー(支台築造物)が一体となっている場合が多く、我々の臨床経験か
らも冠脱離のほとんどが冠自体より、コアー脱離によるものがその大多数を占めていると思われる。
それらの原因を考えると、コアー及びポストの形成印象の不良による形態不良が最も考えられ、さら
に、ポストの材質、合着材の良否など、及び術者の経験、技術差などが考えられる。
我々日常の診療において、細心の注意を払いそれらの施術を行っていても、時間的、経済的制約の
中での手作業では、おのずと限界があり、それらをマニュアル化すればより効率的を診療を行えるも
のと思われる。一方、他の分野とくに製造業では、生産性の向上、コスト低下などのため、部品の標
準化、操作性の向上などが最近、より一層求められているようである。また我々の家庭の中にも料理
の”だし”や食品にも標準化されたものが多くみられるようになってきたのも現実である。
歯科臨床の場においても、一定のマニュアルに従って施術すれば、ほぼ良好な結果をもたらす材料
、器具、テクニックなどが、時代の流れからいっても必要となるであろう。
このような問題を解決すべく、従来からの接着などにたよる、ポスト支台だけでなく、機械的に脱離し
にくい構造を有する、形状記憶合金を用いたポスト支台の開発に着手した。(続く)
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歯科治療台兼用車椅子
吉川病院歯科部 藤井佳朗
緒言
従来、心的障害が生じたり、病弱であったり、高齢となって自力で動けない患者の歯科治療を遂行す
る場合、ベッド上では治療に制約を受けることが多く、そのため、介護者が患者を椅子などに座らせ、
歯科医師が治療を行うことが多いが、患者を歯科治療に最適な姿勢、すなわち頭部を後傾し、口を上
に向けた状態を維持することは、はなはだ困難であり、しかも歯科医師は立ったままでの治療になっ
てしまい、また、患者が歯科治療室におもむく場合は、介護者が患者の車椅子とベッドおよび診療台
間の移動を行わねばならず、介護者にも大きな負担となって、腰痛などを患いやすかった。そこで社
会の高齢化がすすむにしたがって、問題となるこうした事態に対応できる車椅子を考案した。(続く)
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診療室で使用して便利な保冷庫
東京都開業 荒井敏夫
1.目的
歯科で多く使用されている薬剤例えばサホライト・ネオクリーナー・ダイカルなどの使用書には冷暗
所に保管して下さいとあるが、冷暗所とは何度くらいでしょうか。また高分子製剤、例えば接着剤の
パナピア21・マックボンドやライナボンド等は冷蔵庫に保管し、使用前15分前以上室温に放置して
後使用して下さいと注意してあります。これは結露して接着効果が低下するのを防止するためで、
我々臨床家に責任をするものである、また待ち時間も惜しい。そこでレジャー用のポータブル型の
冷温庫に、温度測定素子のサーミスタとデジタル温度計を組み込んで、庫内から素剤を出しても結
露しないように14℃〜16℃位で温度管理のできる保冷庫を試作して使用して便利なので発表しま
す。(続く)
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省力化を高め安全性も追及したリムーバーの開発
昭和大学・歯・歯科理工、*日本精機(株)R&Dセンター 清水友、宮崎隆、馬場紀明*、東政利*
T.背景
日常臨床で使用頻度の高い小器械に補綴物の撤去時に用いるリムーバーがある。現在一般的に
よく用いられているリムーバーは、撤去用の爪を一端もしくは両端に装着した金属棒に百数十グラ
ムの重りをドーナツ状にくり貫いて通し、撤去する補綴物に爪を掛け爪と反対側の重り止めに重りを
衝突させることにより補綴物を撤去する方式である。この方式は簡便で機能上は十分である
が、歯や患者にとってはいくつかの問題点を抱えている。一つには補綴物の着脱方向と平行な力を
加えることが困難な場合がしばしば起こりうる。口が小さい患者や奥の大臼歯等に用いる場合には
ともすると着脱方向から60度位傾くことすらある。そのため必要以上に力を加えることが多く、歯を
傷めたり患者に余計な苦痛を与えることも多い。また、重りの可動距離が長いため、勢い余って爪
が補綴物からはずれ、下や口唇あるいは頬粘膜等の軟組織に思わぬ損傷を与える危険もある。
今回試作したリムーバーは、以上のような問題点を改良すべく、既存製品に見られなかった機構を
用い、できるだけ小さな力で歯や患者に余計な負担をかけず、補綴物の撤去を可能にし、不用意な
事故を招かないような安全性の高いものを目指した。(続く)
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10 ワックスペンWAX MASTER DP300
大阪府池田市開業 岡崎卓司
T.目的
歯科臨床に於いて不可欠の材料と言えばワックス類であろう。現在の歯科医療に於いてパラフィンを
使用しない日は皆無と言える。ほとんどの技法は、Rost Wax Systemであるから当然である。こ
のワックスに無くてはならないものが、パラフィン スパチュラーと加熱源となるアルコールランプ、ガ
スバナー、電気などである。
そして狭い技工室で通常はガスバナーをつけっぱなしにしてワックス作業を行っているのが常である
。当然健康には悪いことは明白である。そこで近年火災を使用しない電気を熱源としたワックスペン(
スパチュラー)が各メーカーから販売され、徐々に普及しはじめてきている。熱のコントロールには抵
抗値に寄ったり、電力制御による成り行き制御が主である。これらの方式では温度の上昇も遅く、ま
た均一な温度の設定が思わしくない。そこで次のような発想の転換を図って非常に使い易いワックス
ペンDP−300を作った。(続く)
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11 インフォードコンセントを重視した画像管理ソフトの開発
中野歯科クリニック 勝見行雄
最近のデジタルカメラの進歩により、歯科医療の世界においてもデジタルカメラを診療に利用していら
っしゃる先生も多く認めるようになってきた。このデジタルカメラの最大の長所として、コンピューターに
簡単に取り込むことができ、その後画像処理ができることが挙げられる。もちろん今までのフィルムカ
メラにおいてもスキャナーを使うことにより、画像ファイルとしてコンピューターに取り込み、同じように処
理することができる。そして患者教育、研究学会などのプレゼンテーションに利用することが多いと思う
。これらの画像ファイルをデータベース化して保存することが必要であるが現実には歯科用に開発され
、市販されているデータベースソフトはほとんど見ることがない。
今回われわれは、診療中の撮影された画像を治療内容別に保存していつでも容易に検索し読み出すこ
とができ、治療計画の指針に利用したり、患者の治療内容の説明、動機付け、印刷物への応用などに
利用できる画像管理ソフトを開発した。(続く)
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