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歯科道具誌 JJDent Gadgets No.4 1998 (平成10年11月) 目次

日本歯科道具学会会長あいさつ
発明の刊行物発表(雑誌、新聞)等と特許出願
  「ISO9001」及び「CEマーキング」同時取得事例発表
特別講演 測定の自動化
☆第8回道具大賞にて発表 ↓クリックで冒頭を表示します。
一般研究発表 1.歯科用バキュームのチップ
  〃

2.「pH並びに温度測定用・探針・光プローブ(OPTO)・p」について

  〃 3.イージー・ワックス・カッター
  〃   4.ダブルカットリッジ用オートミキサーの開発
  〃 5.患者毎の滅菌バーを提供できるシステム型滅菌容器の考案
  〃 6.充填用光照射器の技工用途への応用
  〃 7.オステオクラッシャー(採取骨粉砕器)の使用による骨造成法
  〃 8.痴呆患者の義歯装着時使用手袋の考案
  〃 9.歯科技工を容易にするリーゲル型維持装置の考案
  〃 10.唇圧子リッパーについて10.使いやすさを追求したクリーンボックス
  〃 11.作用点形状について
  〃 12.3WAY−SYRINGE、エアー含水の検知法と対策
シンポジウム
  日本歯科道具学会理事会議事録
日本歯科道具学会会則
日本歯科道具学会誌投稿規定
編集後記

*一般論文(冒頭)*

歯科用バキュームのチップ
愛知県開業 上田義人
朝日大学歯学部歯科保存学講座 平田健一 関根一郎
【緒言】
歯科用口腔内バキュームで、切削時の注水や粉塵を効率よく吸引するためには、そのチップ先端を
回転させ、吸引口を治療部位に向けなければらならない。また、口腔内に溜まった水や唾液を吸引す
るときは患者に苦痛を与えないように、その吸引口の向きを変えて使用しなければならない。このため、
歯科助手はそれぞれの吸引方向に応じて、バキュームチップ先端を指でつまみ吸引口を回転させて
いる。しかし、そのチップ先端は強く汚染されているため、そのたびに歯科助手は手を消毒しなければ
ならず、円滑な治療を行えないのが現状である。
そこで、我々はチップ先端を直接触ることなく、遠隔操作によってチップ先端を回転させることができる
口腔内バキューム装置を試作し、その運用性を検討した。(続く)

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「pH並びに温度測定用・探針・光プローブ(OPTO)・p」について
京都市開業 竹内秀行
1.はじめに
前回(第7回)の本学会において、使い捨て「光ファイバープローブ」の発明について発表し銅賞を受
賞、現在発売され好評を得ている。
今回はその光プローブに改良を加え、多目的に使用できるようにした、即ち、プローブ先端の半球形
部(直径0.6mm)にISFET(pH濃度センサ)と温度センサを配置し、限局された局部のpH並びに、
温度を同時に測定できるようにした。
しかも、センサが組み込まれたプローブ部は廉価に製作し、二次感染防止の意味から使い捨てがで
きるようにした。
従来の歯周ポケットの深さや歯石の位置等も同時に測定できる。(続く)
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イージー・ワックス・カッター
昭和大学歯学部歯科理工学教室 高柴重幸、宮崎隆
T研究の背景T.研究の背景
歯科の臨床において、模型上で咬合関係を再現するための咬合採得は頻度の高い治療行為である。
咬合採得にはラバー系材料、プラスティック系材料などの使用も見受けられるが、一般には安価な
板状パラフィンワックスを小さく短冊状に切断したもので代用しているケースが多い。しかし、この切
断作業は刃物を使用するため危険を伴うだけでなく、回数に応じたり個別生産という極めて効率の悪
い方法であり、時間や労力を要する面倒な作業である。また、この手間な行為がスタッフのサボター
ジュの口実ともなり、日常の円滑な治療の妨げとなることもある。
そこで、効率が良く操作が簡便で安全性の高いワックス切断用装置・イージーワックスカッターの製
作・開発を試みた。本稿では、試作機が完成するまでの経緯とその特徴、性能を紹介する。(続く)
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ダブルカットリッジ用オートミキサーの開発
明海大学歯学部歯科材料学講座 新井浩一
昭和大学歯学部保存修復学講座 鈴木敏光、久光久
はじめに
シリコーンゴム印象材の練和方法には、手練和と手動式ディスペンサーを用いて行う方法などがある
が、前者は術者により練和条件が異なり、しかも操作が繁雑である。一方、後者は、練和する際に、ハ
ンドルを押すのに強い力が必要になり、しかも流量をコントロールしにくいなどの欠点がある。
そこで、本研究の目的は、手動式ディスペンサーの欠点を改良したダブルカートリッジ用オートミキサ
ーを開発することである。(続く)
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患者毎の滅菌バーを提供できるシステム型滅菌容器の考案
大阪府茨木市開業 山本幸夫
はじめに
歯科用バーの滅菌のために考察されたケース類は多種多様市場に出ているが、それぞれ一長一短
があり、使い勝手のよい製品は少ないように思う。これら歯科用バーの形態が多く、取扱い中にバー
がケースからこぼれてしまったり混ざり合ったりするため、使用後の洗浄・滅菌・保管には多くの手間
が必要になる。
歯科治療にはクラウンブリッジ・充填・根管治療・小児歯科などと類別され、歯科医師により使用する
バーの種類は異なるものの、一回の治療に使用するバーは概ね10本以内である。そこでダイヤモン
ドバー・スチールバー・ピーンリーマー等を任意に10本まで収納し、使用後は超音波洗浄・オートクレ
ーブ・保管ができ、セットの内容が外から識別できる容器を考案した。(続く)
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充填用光照射器の技工用途への応用
大阪府茨木市開業 山本幸夫
はじめに
義歯リベース材の改良は目覚しいものが有り、特に光重合型リベース材はこれまでのものと異なり、
局部床義歯においても外すタイミングを誤り、外れなくなる不安も解消された。臨床上、大いに助かっ
ている。
しかしながら光重合型リベース材を用いるには専用の光重合器が必要であることからその導入をた
めらう歯科医師も少なくないと推測される。1ヶ月に数回と思われるリベースのために新たな器械を購
入するのではなく、日々臨床に用いている充填用照射器に工夫を加えることでリベース材の光重合を
行えるようにと考案したのがこのアタッチメントである。(続く)
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オステオクラッシャー(採取骨粉砕器)の使用による骨造成法
東京都開業 奥寺元
【諸言】
健康歯槽骨は歯牙を長期に維持させるに不可欠な存在で、歯周疾患その他の疾病、或いは歯牙の抜
去による骨の吸収等は隣在歯の保存状態を悪くし義歯の安定と周囲組織にも問題を生じる可能性が
あり、更にはimplantの植立を不可能にすることさえある。
日常頻繁に行われる歯周治療においては、吸収部の骨の造成に対応できる有効な骨補充材が期待さ
れるものでありますが、人工骨および他家骨の応用はそれなりに危惧される点を内包しております。
そこで、安全で何よりも確実なものが自家骨移植であると考える。(続く)
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痴呆患者の義歯装着時使用手袋の考案
芳川病院歯科部 藤井佳朗
【目的】
社会の高齢化が進むにしたがい、痴呆、寝たきりや片麻痺など老人に特異的な疾患が増加し、大きな
社会問題となっている。このような老人性の疾患は、患者本人に抵抗力が少ないこともあり、現代医療
をもってしても、回復が困難なことが多く、長期入院とともに、膨大な医療費が消費される。結果的に政
府の財政危機を招き、医療費抑制策、患者や家族の負担増という医療、患者両サイドへの負担を強い
る結果となっている。こうした現況の一因が、わが国における社会福祉の貧弱さにあることは、議論を待
たないが、これからの高齢社会を乗り切るための介護保険制度の充実などにはまだまだ時間を要する
ことは間違いない。このようは八方塞がりの医療危機のなか、歯科医療がこうした老人性疾患に対して
有効な解決手段になり得ることをこれまでわたしは主張してきた。一般医科では治療困難とされた痴呆
患者でも、義歯の装着などによる咬合治療により、症状が改善されることも稀ではない。具体的には、
全身状態にとって大きな影響があるといわれる咬合状態の改善による治療により、高齢患者のQOLや
ADLの改善を図ろうという試みである。
痴呆患者に関しては、義歯装着などの咬合治療が有効なことがあるが、患者自身が病気であることを
自覚していないと思われることが多く、また、長期間にわたって、義歯などの補綴処置もしていないこと
も多い。したがって、義歯装着による治療効果など理解することもなく、義歯装着時に不快感のみを自
覚し、装着された義歯を装着直後に放棄することが多い。しかしながら、義歯装着後しばらくすると義
歯装着の事実をも忘れてしまうことがあり、そこまでの時間稼ぎができれば、義歯装着が可能となるこ
ともある。
そこで今回は、義歯装着後、義歯放棄ができず、また簡単に装着できる手袋を考案したので紹介したい
。(続く)
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歯科技工を容易にするリーゲル型維持装置の考案
奈良県開業 杉中功一
T目的
コーヌス・テレスコープ義歯が紹介されたのは十数年前。その機能性、安定性、装着間など極めて優
れているため、臨床での使用が急速に広まり、義歯はコーヌス・テレスコープに限るとまで言われるく
らい盛んに使用された。しかしその一方でいろいろのトラブルも生じた。そのためか最近では一時ほど
の使用状況ではなくなってきている。
このトラブルで特に多いのが内冠が外冠に食い込んで脱離したり、また築造体ごと脱離したりするこ
とである。さらに築造体脱離のまま咀嚼されることによる歯根の破折もよく起こす。またこうした脱離が
起こらなければ逆に着脱困難を起こす。一体これはどうして起こるのか。コーヌス冠の維持はコーヌス
角によって生じる内外冠の摩擦力を利用しているのであるが、このコーヌス冠は内冠と外冠とが楔と箍
の関係にあるため、必ず内外冠がしっかり嵌合してしまう現象が起こる。外冠から内冠をみると内冠は
楔であり、内冠から外冠をみると外冠は箍になっているのである。この物理的作用によりこうしたトラブ
ルが必ず起こるのである。
臨床では内外冠の摩擦力は600グラムがよいとされているが、実際にはこのように仕上げることは不
可能である。そのためこの不確実性から摩擦力が強すぎたり、逆に弱すぎたりして、その対処に苦労
することになる。これがコーヌス・テレスコープの嫌われる一つでもある。
そこでこの摩擦力をかけなければこうしたトラブルをなくすことができる。しかし新たに維持をどうする
かという問題が生じてくる。それに答えたのがリーゲルという維持装置である。(続く)
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10 唇圧子リッパーについて
大阪府開業 福辻敏
1.目的
口唇を閉じれば、その内側からは内臓学に示すとおり消化器官の入口の口腔である。
歯科医はこの内臓外科の一部を担当しているわけであるが、日常行っている歯科の治療行為は整形
外科の分野のようでもある。このどちらとも言えない歯科の治療は大変複雑で大病院での大手術は別
として、一般の臨床医科と比較しても非常に厄介で困難を極める科である事を一々数え上げれば切り
がない。その歯科治療をより困難にしている要因の中には唾液の洪水と最近と大きく陣取る舌の存在
があるが、もう一つ厄介なものに口唇がある。
人の口唇は鰐の様に大きく裂けてはいない。いくら大きく開いてもたかが知れている。
この唇圧子リプナーを考案した目的の一つは口唇の内側の口腔前庭に挿入し口唇を大きく押し開くこ
とで前歯部と、その周辺の視野を広く確保し治療処置を容易にすることと二つめはハンドピース等から
噴射する水が、顔面に飛散するのを遮断するためであった。然し実際に使用してみて他にも多くの利
点の有ることが判明した。(続く)
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11 作用点形状について
福島県開業 塩田博文
はじめに
生理学で「感覚の投射」という言葉がある。これは箸でやわらかい豆腐をつかんだり、硬いタクワンを
つかんだとき、それそのものを直接持ったわけではないのだが、あたかも自分の指先で触っているか
のようにその性状が感じられる。つまりこのことは指先の感覚が箸の先端に投射されたということにな
る。
道具の使いやすさは、このことが確かな形で反映された結果であろうと思われる。
したがって私たちが日常使用しているものは、それらのことを充分考慮し改善・改良されて現在に至
っていることになる。
しかし、時に私のわがままであるのかもしれないが、改良してみたくなるものがあり、それを紹介させ
ていただく。
私の改良の基本は、グリップの軸延長線上に作用点があった方がよいというコンセプトである。このこ
とが前述の「感覚の投射」に大きく関係していると考えている。もちろん、大きさを無視したところに
その感覚の投射はないことに、いろいろなサイズの試作を重ねることによってそれらを実感することが
できた。(続く)
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12 3WAY−SYRINGE、エアー含水の検知法と対策
葭田歯科医院 葭田秀夫
T.はじめに
歯内療法、補綴処置等行うあたり口腔内での乾燥作業は不可欠である。
我々が乾燥のために、日常臨床で使用している3WAY−SYRINGE(以下3WS)のエアーのノズ
ルから、もし少量の水が出ていたらそれは重大な失敗につながる恐れがある。これを簡便に検査する
方法を考案して使用しているので発表した。なお、この方法で歯科材料店に協力していただき自院以外
の診療室の3WSも調べた。(続く)
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